冬恋


鼻の頭を赤くしながら彼が笑う。
に…と、悪戯な笑みは、何かを思いついた証拠。
「しぃん、ちょいこっち来いよ」
言葉と共に吐き出される息は白い。
俺は苦笑しながら、手招きする彼に近寄った。
「何ですか?」
「寒い」
にこりと笑った彼は、俺のコートのボタンを外した。
「…何してんですか」
「寒いじゃん」
「俺も寒いですよ?」
「知ってる」
そして、また笑いながら、全てのボタンを外し俺を見る。俺よりもほんの少しだけ低い身長なのに、わざわざ、上目遣いで俺の顔を覗き込む。
「じゃぁ、なんで…っ」
「入れて?」
くすくすと笑いながら、俺の胸に背を預ける。
伝わる振動は、彼が笑うから。
俺のコートの合わせを掴み、ぎゅうと胸元に押さえ込むと、彼は振り向いて、また笑う。
「あったかくね?」
「…あったかい、ですけど」
「じゃぁ、いいじゃん」
背中から伝わる体温は、確かに温かくて、それは幸せ…だが。
「恥ずかしいですよ?」
伝えると、彼はケラケラと声に出して笑った。
「それで、余計あったかくなるじゃん」
嬉しそうな彼の声に、俺は溜息を吐くことしか出来なくなった。


[end]


日記から抜粋。
こういうネタが大好きなので、毎年書いてる気がします。えへ。