キミと同じ匂い


最近、吸いすぎだな、と、自分でも思う。
身体に悪影響しかないから止めろ、と、君を叱っていたのが嘘のようだ。
簡単に手に入る精神安定剤と思えば、精神的には悪影響ではないのかもしれないが、…身体に良い事はない。

す…と思いきり吸いこむと、喉の奥が微かに痛んだ。
肺の隅々まで行き渡らせ、そして、吐き出す。
その繰り返し。
ゆらゆらと昇る紫煙と、吐き出される白煙。
指先に残る、煙の匂い。
部屋中に蔓延する、君の匂い。

同じ煙草を吸っているなんて、君の前では口に出せない。
煙草を吸っている事自体、言えない。

君を近くで感じたい、なんて、酷く恥ずかしい感情で、この煙草を吸い始めたのだから。

喉の奥に残るのは、メンソールの辛さ。
君のキスと同じ味。




[end]


イメージはリーマンで、部下に恋するおっさん上司でした(笑)。