星空よりロマンチック


7月6日

『明日一日、お前と話しないから』

「は?」
聞き返す自分の声と重なる無常な電子音。たった一言の電話。
時計を見ればPM23:59。明日ってぇと…後一分後ですか。…って…えぇ?
色々思い悩んでみても、怒らせた覚えもないし、これといって忙しい予定は入ってないし。なんでそんな事言われたか、全然わからない。
ピ、という軽い音が響き、音のした方に視線を向ければ、目覚まし時計が0時を伝えてる。
「明日、ねぇ…」
呟いてみたが、彼の言った明日は、既に今日だ。
カレンダーに視線を向け、日付を確認する。
「…七夕、じゃん」
七月七日は七夕で、アレじゃねぇの?願いごとしたり、恋人達はロマンチックに星空でも見上げるんじゃねぇの?
「………嫌われた、のか?俺…」
全然わけがわからない。
そんな時は寝るに限る。
だって明日もあの人に逢える。そしたら、理由聞けるじゃん。
俺は自分の頬をパシパシと叩き気合いを入れると、ベッドに滑りこんだ。
…なかなか眠りにつけないのはヒミツで。


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7月7日

「ねぇ、ちょっと」
やっと見つけた茶色の頭に向かって話しかける。気が付かないのか、こちらを向かない。
「ちょっとってばーっ!」
がーっと走って近寄って、その服を掴んで歩みを止める。
…耳に届いたのは溜息。
「昨日のアレは何?」
前に周って詰め寄っても、その視線はこちらに向かない。
存在自体をスルーしてる感じ?何これ、いやがらせ?ってか嫌われ?
「理由教えてよ」
肩に手を置き、キスする勢いで壁に押し付けると、やっと視線をこちらに向ける。一瞬安心した俺の隙をついて、きついボディーブローが決まる。
「…ぐ…。……な…、なんで…」
言葉が出ない。結構なお手前で、とか冗談言える痛さじゃねぇ。ってか殺す気?嫌われ?
ちょっとだけ涙が滲む自分が情けないやら可愛いやら。
「今日は話さないって言ったろ?言うこと聞かなきゃ、嫌いになるぜ?」
くす、と笑うその言葉に、驚きと安心を。
嫌いになるってことは、まだ嫌われてないってことで。
涙と一緒に出てきそうな鼻水をずずっとすすって、今日のところは諦める…以外できないから、涙を拭って諦めた。


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7月8日

0時丁度にベルがなる。

『ばーか』
わーい。電話してきて一言目がそれって、俺ってば愛されてるー…なんて思えない。
「…何が」
『お前が』
そっけない台詞に含まれる笑いが救い。
「…ってか理由」
なんだか情けなくなってきて、さっさと切り出す。受話器の向こうは笑い声。一人で笑ってないで、こっちにもお裾分けしてください。
『七夕だから』
「は?」
『七夕だから』
「は?」
『七夕だからって言ってんだろが』
「はぁ」
理由ワカリマセン。それとも、これは異国の言葉ですか。異国の文化ですか。
「七夕で、なんで無視ですか」
『織姫と彦星を幸せにするために』
更にワケがワカリマセンが。
「それで何故無視ですか」
『だって俺ら普段いっつも会ってんじゃん。だから、今日くらいどうでもいいかな、っていうか、俺らの分の幸せもお裾分けっていうか、そんな感じ』
な、何おかしな、…ていうか、可愛い事言うんですか、貴方。
可愛いって思う俺がおかしいのか?
「…んじゃぁ、別に俺が嫌いだから話しをしないとかではない、というわけで」
『や、まぁお前を試したってのもあるけど』
電話の向こうは又笑い声。
「…なっ?何を試され?」
『どんだけ俺を好きか?とか?』
ケラケラ楽しそうに笑う。
『一日話せないだけで不安になるくらい好きなんだーって』
語尾は笑いで消える。
わー、苛められてる。盲目的に好きなことからかわれてるよ、俺ー。
「…好きですよ」
そんな時は開き直るに限る。好き好き大好きだって毎日言ってんだろ、ちくしょうめ。
『それがわかって嬉しかった』
笑いが止んで、ちょっと照れてる声。
「マジで?」
『マジで。苛めてごめんなー?』
照れたままの声。容易に想像できる表情。あぁ、近くにいるならぎゅっと抱きしめて押し倒してxxxxxxxxx。
『なんて、嘘だけど』
幸せな思考をたちきる貴方の声。
あぁ…なんでこんな人好きになったんだ。

『でも、お前の事、好きだよ』

…飴と鞭ですか。


織姫と彦星が羨ましがるくらいの恋愛してやる、こんちくしょう。



[end]


旧日記と同人誌「狂喜乱舞でランデブー」から抜粋。
タイトルから寒いし、中身も寒いのは、自分のいつものテンションで書き散らしたから。故に口調とかがモロに自分で気持ち悪いです(笑)。