サクサクサクサク…

真っ白い雪の上に、足跡が残る。
その度に、耳には小気味よく『サクサク』という雪特有の音が届いた。
珍しく降り積もった雪に、大和は嬉しそうに微笑み、誰にも汚されていない場所ばかり選んで歩く。

「すっげぇ〜、まっしろ〜っ!」
公園につくなり、そう叫ぶと、走る。
まっさらだったそこは、大和の王国になる。
真一は大和を見てくすりと笑うと、まだ大和の足跡が残らない新雪を踏みしめた。
サク…という音は、きつく踏むと、ギシ…という音に変わる。
その音を聞き付け、大和は笑う。
「なんかさぁ、気持ち良くね?」
くすくすと笑いながら、足跡を増やしていく大和を見ながら、真一も微笑む。
「そうですね」
そうつぶやくと、大和の手を引き寄せ抱きしめた。
急な真一の行動に、腕の中で大和は驚いた表情になる。
「…っ?」
そのまま小首を傾げる大和に、真一は返事のかわりにきつく抱きしめ、その首筋に唇を寄せる。
「誰の足跡も残らない雪の上を歩くのと、コレって何か似てる気がするんですよね」
「コレ…ってなんだよ」
耳元で聞こえる真一の台詞を疑問に思ううちに、首筋に鈍い痛みが走り、大和は顔を歪める。
「だから、コレ」
答えを躯に知らされた大和は、きつく自分を抱きしめる真一の腕の中でもがき、真一を睨み付けた。
「なんで…っ!痕つけてんだよ!!」
「アト残すのって、なんか征服欲って感じで似てる気がするんですよね」
真一はさらりと答えると、もう一度大和の体を強く抱きしめる。

「俺以外の痕、残しちゃ駄目ですよ?」
「ざけんな、真一」
真一の台詞に、大和はにやりと笑うと、真一のすねを思い切り蹴り上げた。
「っ?!」
突然の痛みに、真一は息を飲む。
自分を抱きしめていた腕の力が緩んだ隙に、大和はそこから抜け出すと、また真っ白い雪の上に跡を残して行く。

すねを押えてうずくまる真一の方に視線を向け、大和は、ふわりと微笑む。
大和の視線の先には、雪に濡れた大和の靴の跡が、真一のズボンにしっかりと残っているのが見えた。



[end]


初稿0201。靴の跡も「アト」なんです。
書いてる時、私の住んでる地域は、膝上までの雪でした。